医療施設用配線器具
医用接地配線器具 テクニカルノート
内線規程(1350-17)により、病院、診察所などにおいて、医療用電気機械器具を使用する部屋には、JIS T 1022(病院電気設備の安全基準)に基づき適切な接地工事を施さなければなりません。
JIS T 1022 では、医用接地センタボディー及び医用接地端子は、JIS C 2808「医用接地センタボディー及び医用接地端子」に適合したものを使用し、100V系に使用する医用コンセント は、JIS T 1021「医用差込接続器」に適合したものを使用することとなっています。
■医用接地方式、非接地配線方式および非常電源の適用基準(JIS T 1022より)
病院、診療所などに設ける電気設備は、医用室のカテゴリごとに医用接地方式、非接地配線方式、非常電源を適用しなければなりません。
<医用接地方式、非接地配線方式及び非常電源の適用>
医用室の カテゴリ |
医療処置内容 | 医用接地方式 | 非接地 配線方式 |
非常電源(注1) | ||
---|---|---|---|---|---|---|
保護接地 | 等電位接地 | 一般/特別 (注2) |
無停電 (注3) |
|||
A | 心臓内処置、心臓外科手術及び生命維持装置の適用に当たって、電極などを心臓区域内に挿入又は接触し使用する医用室 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
B | 電極などを体内に挿入又は接触し使用するが、心臓には適用しない体内処理、外科処置などを行う医用室 | 〇 | + | 〇 | 〇 | + |
C | 電極などを使用するが、体内に適用することのない医用室 | 〇 | + | + | 〇 | + |
D | 患者に電極などを使用することのない医用室。 | 〇 | + | + | + | + |
○:設けなければならない。
+:必要に応じて設ける。
(注2)医用電気機器などに応じて、一般非常電源及び/又は特別非常電源を設けることを意味する。
(注3)医用電気機器などに応じて、無停電非常電源を設けることを意味する。
<医用室の適用例【参考】>
医用室のカテゴリ | 医用室の例 |
---|---|
A | 手術室、ICU(集中治療室)、CCU(冠動脈疾患集中治療室)、NICU(新生児集中治療室)、PICU(小児集中治療室)、心臓カテーテル室など |
B | GCU(新生児治療回復室)、SCU(脳卒中集中治療室)、RCU(呼吸器疾患集中治療室)、MFICU(母体胎児集中治療室)、HCU(準集中治療室)など |
C | 救急処置室、リカバリー室(回復室)、LDR(陣痛・分娩・回復)室、分娩室、新生児室、陣痛室、観察室、ESWL室(結石破砕室)、RI・PET室(核医学検査室)、温熱治療室(ハイパーサーミア)、放射線治療室、MRI室(磁気共鳴画像診断室)、X線検査室、理学療法室、人工透析室、内視鏡室、 CT室(コンピュータ断層撮影室)、病室、診察室、検査室、処置室など |
D | 病室、診察室、検査室、処置室など |
■医用接地方式
マクロショック(※1)の防止を図るため、医用電気機器を使用する医用室には、その医用電気機器の金属製外箱などの露出導電性部分に保護接地を施設しなければならない。
ミクロショック(※2)の防止を図るため、医用室内の医用電気機器、自動ドア、戸棚などの固定露出導電性部分、及び水道管、戸棚、 窓枠などの固定系統外導電性部分を一点(接地センタ)へ電気的に接続し、患者周囲の金属相互の電位差を10mV以内とする等 電位接地を施設しなければならない。
※1 | マクロショックとは、電流の流入点と流出点が共に体の表面にある場合の感電であり、1mAで知覚され、100mA以上で心室細動に至ると
されている。一般的に感電と言われている現象と同義。
医療現場においては、最小感知電流の1mAに安全率1 / 10を乗じた0.1mAを安全許容電流としている。 |
※2 | ミクロショックとは、電流の流入点か流出点のどちらか一方または両方が直接心臓に接触しているか、あるいは心臓に近い場所にある場合 の感電であり、微小な電流でも心室細動を引き起こす可能性がある。 一般に心室細動に至るとされている0.1mAに安全率1 / 10を乗じた0.01mAを安全許容電流としている。 |
■非接地配線方式
電源の遮断による機能の停止が医療に重大な支障を来たすおそれがある医用電気機器を使用する医用室のコンセント用分岐回路には、 電路の一線地絡時にも電力の供給を継続させるため、絶縁変圧器の二次側の中性点又は電路の一端を、接地しないか又は高イン ピーダンスで接地した非接地配線方式で施設しなければならない。
■非常電源
電源の遮断による機能の停止が医療に重大な支障を来たすおそれがある医用電気機器を使用する医用室の電源回路には、その使用目的に応じて非常電源を設けなければならない。
一般非常電源は、次の性能を持つ自家用発電設備とする。
・商用電源が停止したとき、40秒以内に電圧が確立し、自動的に負荷回路に切り換えて接続し、かつ、商用電源が復旧したとき、自動的に切り換わって復帰できるものとする。
・自家用発電設備は、10時間以上連続運転が可能なものとする。
特別非常電源は、次の性能を持つ自家用発電設備とする。
・商用電源が停止したとき、10秒以内に電圧が確立し、自動的に負荷回路に切り換えて接続し、かつ、商用電源が復旧したとき、自動的に切り換わって復帰できるものとする。
・自家用発電設備は、10時間以上連続運転が可能なものとする。
無停電非常電源は、次の性能を持つ無停電電源装置(UPS)と自家用発電設備とを組み合わせたものとする。
・商用電源が停止したとき、無停電電源装置(UPS)によって負荷電力の連続性を保ち、自動的に負荷回路に切り換えて接続し、次いで電圧が確立した自家用発電設備に自動的に切り換えて接続し、かつ、商用電源が復旧したとき、自動的に切り換わって復帰できるものとする。
・無停電電源装置(UPS)は、JIS C 4411-1、JIS C 4411-2及びJIS C 4411-3に規定したもので、無停電電源装置(UPS)の蓄電池は、充電を行うことなく、10分間以上継続して負荷に電力を供給できるものとする。また、無停電電源装置(UPS)は、負荷の種類にかかわらず、保守(非常)バイパス回路を設置する。
・自家用発電設備には、40秒又は10秒以下で電圧が確立する自家用発電設備を使用し、10時間以上連続運転が可能なものとする。
■医用室のコンセント(JIS T 1022より)
・医用電気機器に用いるコンセントは、医用コンセントとする。
・1分岐回路に接続する医用コンセントの口数は、通常10口以下とし、必要な数量の分岐回路を設ける。
・定格電流が10Aを超える医用電気機器を使用する医用室には、専用の分岐回路を設け、かつ、医用コンセントには見やすい箇所にその旨を表示する。
・医用室のコンセントには、次の方法によって、電源の種類を明示する。
(a)商用電源だけから供給されるコンセントは、外郭表面の色を白とする。
(b)一般非常電源から供給されるコンセントは、外郭表面の色を赤とする。
(c)特別非常電源から供給されるコンセントは、外郭表面の色を赤とし、見やすい箇所に特別非常電源である旨を表示する。
(d)無停電非常電源から供給されるコンセントは、外郭表面の色を緑とする。
(e)非接地配線方式のコンセントの色は、(a)~(d)に規定するコンセントの外郭表面の色とし、特別非常電源の場合には、その旨を表示する。
(f)非接地配線方式によるコンセントは、非接地配線方式以外の配線方式によるコンセントと識別できるようにする。
※規格、基準等は変更になる場合があります。最新版によって施工してください。